ト・ヘン
TOHEN Inc.

What's numbers

company info.

Topics

Essay

contact
Topics

2015-07-16 朝日新聞記事


ウ〜ク。の記事が7月16日朝日新聞に掲載されました。



    ※上の画像をクリックすると大きな画像が開きます。

       デジタル版 / デジタル版動画
もしもピアノが(練習なしで)弾けたなら――。夢をかなえる電子楽器を、作曲家の佐野芳彦さんが考案した。楽曲データを記録した装置にキーパッドをつなぎ、好みの指使いでたたくと曲が流れる。脳の活性化や意欲向上の効果も期待でき、非常勤講師を務める名古屋市立大で、手指のリハビリや認知症予防などに活用する研究が始まった。
 佐野さんは映像や舞台の音楽を手がける傍ら、脈拍や体温などの数値変化を音楽にする「サウンドセル」を提唱。2007年、医療への応用を探る研究会を名市大の医師らとつくった。13年には認知機能の確認に役立つ医療用「音楽パズル」を試作するなど、成果を上げてきた。
 新たな楽器考案は、ピアノを使ったリハビリで知人が脳出血後の後遺症から回復したと聞いたのがきっかけ。「初心者も楽しく弾ける楽器があれば」と、鍵盤の代わりに圧力センサーパッドを並べて音を出す装置を試作した。サウンドセルの手法を応用して、楽曲を音列データに分解。あらかじめ登録しておいた通りにキーパッドを押すと、それに応じて音列データの音が順番に流れて楽曲になる。
 パッドは数百円ほどの市販品。「ユニバーサル(万人の)・キーボード・ユニット」の頭文字をとり「ウ〜ク。」と名付けた。
 6月中旬、名市大大学院医学研究科の大原弘隆教授の研究室で、職員らが試作品を演奏した。同大病院作業療法士の坪井理佳さんは親指、人さし指、中指で3枚のパッドを順番に繰り返し押す単純な運指を登録。同じパッドでも曲の進行に合わせて異なる音が流れ、「故郷(ふるさと)」のメロディーになった。
 「押すタイミングや長さを変えれば情感を表現でき、演奏する満足感がある。単調になりがちなリハビリもこれなら楽しい」。同大病院リハビリテーション科の青山公紀助教は「音楽は脳の機能を賦活し、自ら奏でることで意欲も高まる。足先などでも弾けるように工夫すれば、手術後の筋力低下防止にも役立つのでは」と期待する。
 「音楽の医療への活用は盛んだが、誰でも演奏可能な楽器でリハビリ効果と意欲を共に高められる点で画期的」と大原教授。「脳内で、指を動かす部位と音に反応する部位が連動し、より有効な刺激となることが期待できる」と話す。
 衣服にパッドを貼れば、ダンス風に体をたたいて演奏することも可能だ。「低価格で普及すれば、若者の音楽シーンが変わるかも。一般にも使われてこそ『ユニバーサルデザイン』」と佐野さん。
 近く企業との共同開発を探る面談会に臨み、商品化への一歩を踏み出す。(西本ゆか)

2015年7月16日朝日新聞


Copyright (c) Tohen Inc. All Rights Reserved.